【Q】北海道の農業業界の現在の状況は?
【A】慢性的な後継者不足も農業に関心が高まる
当公社は1970(昭和45)年に設立、2009(平成21)年に社団法人北海道農業担い手育成センターと合併しました。
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農業・農村の活性化を目指す地域の取り組みを支援し、その一環として、各自治体と連携して農業への新規参入者の確保と支援に力を入れています。
北海道内の農家戸数は現在約3万5千戸ですが、慢性的な後継者不足の問題があり、多くの自治体が新規参入者に対して積極的な支援体制を整備している状況です。近年の道内における新規参入者数は、毎年約120人前後で推移しています。
また、新型コロナウイルスの影響もあるのか、第1次産業への関心が高まっています。自然の中で家族とともに営農するという、農業の最大の利点が見
直されているようです。一生を同じ職業や会社で終えるような時代ではなくなり、自身の人生設計の中で選択する職業の一つとして農業を考える人が増えていると感じています。
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特に最近では、20〜30代で就農の相談に来る人が多いです。5年先や10年先の将来を視野に入れ、その間に情報収集や自己資金の用意などをしつつ、計画的に就農に向けて準備をする人が増えている傾向にあります。
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【Q】人材育成・募集のための働きかけは?
【A】相談には個別に対応 就農までを確実にサポート
当公社では、主に独立就農を希望する人を対象に、オンラインを含め常時個別の就農相談に応じています。就農までのステップは相談から始まり、農業体験、就農研修、就農準備と進みますが、入り口となる相談で一番大切にしているのは本人の本当の希望を導き出すこと。話をしていく中で、求めているものが職業としての農業ではなく、田舎暮らしという意味での農的生活だと判明することもあるため、聞き取りは慎重に行っています。
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そして、個々の状況を確認し、そこから就農に至るまでにはどういった情報提供が必要かを絞り込んでいきます。農業体験を経て、野菜や酪農など希望する業態や、育てたい作物が決まれば、産地化されており、サポート体制が整い、十分な所得の確保が見込める自治体を就農研修先として紹介しています。基本的には研修先でそのまま就農することになりますので、この段階で生活することを前提に地域の様子をしっかりと見て、自治体側とも話し合い、互いの合意を得てから受け入れが決定します。
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主な研修方法は野菜栽培を例にすると、指導者が在籍する研修農場で学んでから農家研修で実践的な技術を習得する方法、農家研修で作業手順を習得してから実践研修農場で模擬経営を行う方法などがあります。研修期間の後半には、農地や資金の確保などの就農準備も並行して行います。就農相談を始めてから就農するまでの期間は、最短で3年程度となります。
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【Q】農業業界でU・Iターンを目指す人へ
【A】社会人として得た経験が総合的に生かせる
地域の実情を知る前に、先に移住を決めてしまう人もいますが、まずは就農相談で研修先を決めることをお勧めしています。研修期間中は、住宅が用意されたり、家賃の助成制度があったりと、自治体がサポートをしますので、移住は研修の受け入れが決まってからで大丈夫です。
独立就農というのは、ただ作物を作る技術があればいいというわけではありません。個人経営ですので、計数管理や人を雇うなど経営者としての視点も必要です。
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また、就農するということは、その地域の社会の中で生きていくということです。地元の農家の人たちや住人たちと良好な人間関係を築き、お互いに協力し合うことが必要となります。そこで重要となるのが、人と協働することができるといったような社会人としての基本的な資質です。
他業種であったとしても、そこで得た経験や、培われた社会性などが、農業では総合的に生かされます。農業技術や営農に関するノウハウは、研修を受けることで後からでも身につけることができますので、就農を目指すのは社会人としてのスキルを磨いてからでも遅くはありません。
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北海道では農業が主要産業ということもあり、就農後も手厚い支援体制が整備されています。今は「1日農業バイト」というアプリなどで気軽に農業体験をすることができますので、少しでも興味があるのなら、ぜひそこから始めてみてはいかがでしょうか。
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